わざと違える美学
安野さんは、例えば教会の風景を写生するときに、屋根の十字架を省略したり窓の数をわざと違えて描くことがあるらしい。
すると、なかには親切な通行人がいて違っている部分を注意してくれるのだそうだ。
そのたびに安野さんは「どうもありがとう」と礼をいってそのように書き足すという。
紫綬褒賞、国際アンデルセン賞、菊池寛賞などいくつもの栄誉に輝く画伯が、見ず知らずの素人に言われて作品に手を加える。
なぜかを尋ねると「だって、相手の顔を立てないと…」と穏やかに微笑しながらおっしゃるのだそうだ。
わざと違える美学。
ジンときました………